昨日、谷村新司さんが今月の8日に74歳でお亡くなりになられたことを所属事務所が発表し、テレビの情報番組では『チャンピオン』『昴』『サライ』といった数々のヒット曲が放送されていました。
谷村新司さんが作詞作曲された『いい日旅立ち』では、冬が終わりかける頃、北国を目指して一人で旅に出る時、「幸福」、そして春から秋にかけてよく見られる「羊雲」を探しに行くという、未来に目を向けた希望が表現されています。
この歌を聴くと、未来のありたい姿に向かって頑張る人を応援するためにあるコーチングが頭をよぎります。
私が感銘を受けた驚愕のコーチングセッション
私はこれまで、公開することや提出することを目的としたコーチングセッションをいくつも見聞きしてきました。
なかでも「コーチングってめちゃくちゃすごいな…」と感銘を受けたセッションがあります。
クライアントが在籍する営業部での出来事です。
新参者のAさんが部長に就任して以降、最古参であるBさんのモチベーションが目に見えて低下してしまったことから、部署内の雰囲気は悪くなりました。
部署の中で年長者のクライアントは「自分がなんとかしなければならない」「でも何をすればいいのかわからない」という問題を抱えていました。
そしてこの問題を解決したいということを、コーチングセッションのテーマにしました。
セッション時間は30分でした。
クライアントはコーチの質問を受け「まずはBさんと話をしてみるのがよさそう」「社内ではなくお酒を飲みながら話すのがよさそう」「その次にAさんと話をしてみる」「Aさんともお酒を飲みながら話したい」「お酒の席では大半が世間話でいいと思う」「AさんもBさんも勘が悪い人ではないし、自ら話をしてくれると思う」と、頭の中を整理しながら自分自身で答えを見つけていきます。
そして「月曜日の朝礼が終わったあと」「Bさんを呼び出して」「ちょっといい?夜、飲みに行かない?」と声をかけることを決めます。
さらにコーチは質問をします。
コーチ:月曜日はどんな色のネクタイをして行きますか?
クライアント:そうですね…爽やかな青のネクタイを締めて行きます。
コーチ:どんな表情をしてBさんに声をかけますか?
クライアント:そうですね…笑顔で声をかけたいと思います。
私はこの対話が30分の間に行われたということと、最後の2つの質問によってクライアントの行動プランがさらに具体化したことに驚愕しました。
私にはクライアントが月曜日に背筋を伸ばし、イキイキとした顔をして出社している姿が目に浮かびました。
このことが「コーチングにはお金を払う価値がある」と認識した瞬間でもありました。
次に、この「具体化」について、多くのヒントが得られるであろう記事を紹介します。
大木素十さんの『近頃のこと』
今月14日、有職造花師(ゆうそくぞうかし)の大木素十(おおきすじゅう)さんのブログ『近頃のこと』で、「たれにあいみぬ女郎花」が公開されました。
前半では猛暑によって失われた季節に埋もれてしまった虫のことを哀れみ、後半では自身の死生観を綴られています。
ここでは「たれにあいみぬ女郎花」の一部を抜粋してご紹介します。
数日前、古い友人の奥さんが、人工透析の苦しみに耐え兼ねた決断で受けた腎臓移植の失敗で、度重なる手術に数ヶ月も苦しまれた挙句、あるかないかの意識の状態で病院を追われ、在宅介護を余儀なくされたひと月後、突然の発熱から呆気なく息を引き取られたと連絡がありました。
かつて、彼らの結婚披露宴に招かれたのでしたが、あれほど美しい日本髪の花嫁は、後にも先にも見た事がありません。
身長差が30数cmという新郎新婦でしたから、羽織袴の新郎に寄り添って歩く様は、宝物が包み込まれるように見えたものです。
その数ヶ月前、改めてプロポーズする必要もなかったのですが、その指輪を銀座に買いに行きたいのだけれど、自分は宝石など分からないから、一緒に行って貰えないだろうかと言われたのです。
勿論、小さな粒のダイヤだったのですが、それをどう渡したら良いかとまた相談されたので、彼女を送ってゆく途中の夜の公園で、とにかく高い街灯の下に誘い、そこで指輪の箱を開けて少し揺らしたならば、あたかも舞台照明に鋭い光を放つ、ソプラノ歌手のイヤリングのように、小さなダイヤほどその光は彼女の目を射るのではないかと、まるで脚本のような提案をしたら、その通りに上手く運んで、彼女は感激に泣き出してしまったと報告を受けたのでした。
どうしたことか、結婚前から2人には度重なる不運が続き、それを2人で乗り越え、また乗り越えて来た挙句の決定的な不幸でしたから、目も当てられない思いで言葉も出ず、直ぐには返信も出来なかったのです。
有職造花師 大木素十「近頃のこと」
人はちょっとした言葉で勇気を持ち、行動できる
前述したコーチングセッションでは「月曜日の朝礼のあと、Bさんに声をかける」ということが「月曜日は青のネクタイを締めて出社し、朝礼のあと、笑顔でBさんに声をかける」というところまで具体化しました。
大木素十さんの友人は「指輪を渡してプロポーズする」ということが「とにかく高い街灯の下で指輪の箱を開けて揺らし、小さなダイヤの光で彼女の目を射てからプロポーズする」というところまで具体化しました。
細部まで具体化することが、人が自信を持って行動するために、とても大事なことのように思います。
昭和53年にリリースされた谷村新司さんの『いい日旅立ち』では「歌を道連れに」北国へ旅立ちますが、令和5年に旅立ちを決意される方々には、「コーチを道連れに」することをお勧めしたいと思った今日この頃です。