コーチングの本質と勇気づけ

先日、作家の山崎豊子さんが88歳で亡くなりました。
山崎さんといえば、綿密な取材に基づき、深く社会問題に切り込む作者として有名です。

「白い巨塔」「華麗なる一族」「沈まぬ太陽」「大地の子」「運命の人」「不毛地帯」等々、テレビドラマや映画化された作品も多く、皆さんも作品を読んだり、視聴された方がいると思います。

その中で「沈まぬ太陽」は日本航空の労働組合や、日本航空123便墜落事故をモデルに書かれた小説ですが、「沈まぬ太陽」を発表後のインタビューで、山崎さんは座右の銘の話をされています。

山崎さんの座右の銘はゲーテの言葉を引用したものでした。

「金銭を失うこと。それはまた働いて蓄えればよい。名誉を失うこと。名誉を挽回すれば、世の人は見直してくれるであろう。勇気を失うこと。それはこの世に生まれてこなかった方がよかったであろう」。

山崎さんは「どんなに正しいことを考えても、それを実践に移すのは勇気なのです。肝に銘じていきましょう」と言っています。

今日は、コーチングの本質とも言える「勇気づけ」についてお伝えします。

コーチングで大切なことは勇気づけです。
それでは勇気とは何でしょうか?

勇気とは、人生を進めていこうとするエネルギー源です。
新しいことにチャレンジする力であり、失敗してもそこからまた学び、再びチャレンジしていこうとする力です。

もし勇気がなかったら、勇気が挫かれていたら何が起こるでしょう。

そもそも自分で夢を描こうとは思わないでしょう。
勇気が完全に挫かれている状態とはどんな状態でしょうか?

子供の頃から「やっぱりあんたはダメだよね」と言われたり、いつも誰かと比較されたりして、勇気挫きを受けてしまっていることがあります。

そうすると自分でも「そうだよね。俺って駄目な人間だよね」「勉強はできない」「人間関係もうまくいかない」と思ってしまっています。

仕事で頑張ってみたものの「上司に気に入られず辞めちゃう」「俺はこんな風にどこへ行ってもダメな人間なんだ」。

夢を描けなくなっている人が普通にいます。
「私の夢は…」と言える人というのは自分に対して信頼感や自己高揚感が高い人です。

自己高揚感がない人は夢なんて描けないでしょう。
できるという感覚とか、できた経験がない人が努力の結果得られるものを描くことはできないからです。

だから夢を描くためには自己高揚感が必要です。
自己高揚感が高いということは自分に対してOKを出しているということでもあります。

勇気づけは、勇気がない人に勇気を与えることではありません。
勇気は自然に流れ出てくるものです。

人間は皆チャレンジし続けたいと思っています。
勇気を持って新しいものを手に入れて、新しいものを学んだら、新しいところから、何かまた新しいものを得ていく、それが人間の本質です。

コーチングが機能するとしたら、クライアントの中に勇気があって、勇気が自然に出てくるものでないと難しいでしょう。

いくらコーチがクライアントに勇気を与えたとしても、クライアントの中にないとしたら、すぐに挫折してしまいます。

私たちは勇気挫きをされると、勇気を出さなくなってしまいます。

今いる所から抜け出せば良いのですが、そこがどんなに悲惨な所だったとしても、未知の世界に出たら何が起きるか分かりません。
また勇気を挫かれるかもしれません。

でも、今いる所にいたら想定内の苦しみで済みます。
もしくはそれほど楽しくはなくても、慣れ親しんだ楽しみの中で生きることができます。

外の世界に出ようとしないのが、勇気を使わないことであり、チャレンジしないことです。
自分の勇気に壁を作ってしまっています。

自分が快適と考えている「コンフォートゾーン」を超えることが必要です。

勇気づけは何もないところに勇気を与えることではありません。
私たちコーチは、その人が常に勇気を出しているところ、出せそうなところに近づいていって、もっと勇気が出せるように関わっていくことです。

コーチングは「ヒーローインタビュー」だという人もいます。
普通のインタビューとは、ちょっと意味が違います。

コーチングでは過去の栄光についてもインタビューしますが、将来、この人はどういう世界でヒーローとして活躍するだろうか、ということを含めてインタビューします。

「なるほど、○○さんは、こんな人生を生きる、こんな物語を生きるヒーローなんですね…」とインタビューします。

その結果として、本当に実現していくように支援していくのがコーチングです。

一人ひとりが人生の主人公です。
「主人公として生きるぞ!」と思ってもらえるようにサポートするのが、私たちコーチの役目でもあります。