コーチングのことを知らない人から「コーチングって何?」と聞かれた時、どのように答えていますか?

質問の内容

ペンネーム:痩せてるときはチューブの前田に似てました(40代・会社員)
私はコーチングを受けたことのあるクライアント経験者であるにもかかわらず、家族や友人から「コーチングって何?」と聞かれた時、コーチングとは何かを上手に説明することができず、「あなたは説明のできないものに対してお金を払っていたの?」と冷ややかな目で見られたことがあります。コーチングのことを知らない人から「コーチングって何?」と聞かれた時、どのように答えていますか?

五十嵐 久コーチからの回答

コーチングの説明ってなかなか難しいですよね。
悩まれるのはとてもよくわかります。
私もコーチになりたての頃、これをどうやって説明したらいいんだろうっていつも悩んでいました。

まず前提として、コーチングって何かということについて復習をしてみますね。

コーチとかコーチングという言葉を聞くと、多くの方はスポーツのコーチを思い浮かべます。
ですが、スポーツのコーチというと、選手としても優秀だった人が指導者になって、自分の技術を教える、いわゆる「教える人」「指導者」として見られていることが多いと思うんですね。

私たちコーチというのは、教えたり指導したりするのではなくて、相手の人と対等な立場に立って、相手の人が自分で気づいて、考えて、行動できるようにサポートをしていく、そんな存在なので、どちらかというとマラソンの伴走者にイメージが近いと思います。

コーチングと似た言葉に、コンサルティングとかカウンセリングがありますけど、こうしたコンサルタントとか、あるいはカウンセラーとは何が違うの?という質問もよく受けます。

まず簡単にイメージしていただきたいのですが、心の平常な状態をゼロとすると、時に私たちは気分が落ち込んでマイナスの状態になってしまうことがあります。
そのマイナスの状態からさらにより深みにはまってしまうと、心の病に陥って、鬱とかになってしまうことがありますが、そこまでいかないまでも、ちょっと気分が落ち込んで悩んでいるなという状態から、ゼロの状態まで引き戻していくのが、いわゆるカウンセリング、カウンセラーの仕事ということになります。

カウンセラーとコーチの違い

カウンセラーはこのマイナスの状態になった原因を探っていくので、過去にアプローチします。
でもコーチというのは、ゼロからさらに10、20、100と、未来のありたい姿に向かって頑張っていく人を応援していくので、視点が未来にあるという違いがあります。

コーチングもカウンセリングもスキル的にはとても似ているところがあり、相手の話をしっかり聞く傾聴とか、相手を認める承認というのはどちらも同じです。

ですから、コーチングをしていても、相手の方がちょっと今気分が落ち込んでいるなというときには、相手に合わせて、いわゆるカウンセリング的なアプローチをして、本来の正常な状態になってからコーチングをしていくということをやったりします。

こんなふうに似ているから余計わかりにくいし、カウンセリングという言葉が今はとても広い概念で使われることが多くなりました。
しかもコーチングに近いこともやり出しているので、実体的にはこのコーチングとカウンセリングの違いというのがなかなか分かりにくくなっているのが現状です。

でも本来はカウンセリングというのは心の病に陥りそうな人の相談・援助・治療行為なんです。
コーチングというのは普通の人が、より自分を成長させたい、変えたい、高めたい、そうした人を応援していくので、対象者が違うということが一番の違いになります。

コンサルタントとコーチの違い

あとコンサルタントとの違いについても少しお話をしておきたいと思います。
コンサルティングというのは、コンサルタントが持っている知識や情報を基に、相手の課題や問題点を見つけて、コンサルタントが改善・提案をしていきます。

それに対してコーチングというのは、コーチが解決するのではなくて、解決するのはあくまでも相手の人です。
相手の人が自分で解決できるようにサポートしていくのがコーチングということになります。

コンサルタントの場合は、どちらかというとモノとか仕組み、コトに焦点が当てられるのに対して、コーチングはあくまでもヒトに焦点が当てられます。
ここが大きな違いです。

ですから、コンサルティングもコーチングも、課題の解決というゴールは同じですが、コーチングの場合にはゴールだけではなく、そのプロセス、相手の方の成長というところに大きな焦点を当てられているのがコンサルティングとコーチングの違いとも言えます。

コーチの語源について

あとそれからコーチの語源というのをお伝えしておきますね。

コーチの語源って馬車なんですね。
馬車というのは大切な人が、行きたいところへ、望むところへ連れていってあげるというところから来ています。
だからコーチの語源が馬車とされているのですが、ここから目標達成を支援してくれる人みたいに呼ばれることもあります。

今で言えばこの馬車に近いものにタクシーがありますね。
でもタクシーのお客様とコーチングのお客様(クライアント)って、何が違うのかを考えていくと、タクシーのお客さんは当然自分の行き先は明確で、ちゃんと知っていますよね。

でもコーチングのクライアントの方って、自分が目指す方向、道というのが必ずしも明確ではない方もいらっしゃいます。
ですから、そうした方には、自分が本当のありたい姿って何だろうということを見つけてあげます。
そんな作業をお手伝いしてあげるのがコーチングということになります。

コーチングの説明方法

まずこのようなコーチングのひとつの概念を大きく捉えていただいた上で、コーチングをどうやって説明をしていけばいいのだろう、ということを考えてみたいと思います。

私がどのように説明をするかというと、実は相手の方によって方法を変えています。

いろんな立場の人がいますよね。
主婦の方もいれば、あるいは経営者、ビジネスパーソンの方もいます。
それぞれ抱えている課題があります。
それぞれのその課題に応じて、どういうふうにアプローチしていったら一番いいのだろうかってことを考えたりします。

集会やパーティーなどで出会った方に「コーチングって何ですか」みたいに聞かれることもあります。

そうした時に少し時間があれば、「ちょっと5分ほど時間ありますかね」と言って、実際にコーチングらしきことをしてみます。

例えばそれでダイエットがテーマになり、具体的な目標を設定することができたとします。

そして「今はダイエットがテーマでしたけど、何かこうしなさい、ああしなさい、みたいに指導をするのではなくて、質問をし、対話をしながら、相手の方が自ら自分でやる気になっていくようにサポートしていく、これがコーチングです」とお伝えします。

つまり「実際にやって見せる」のもひとつの方法かなと思います。

回答していただいたコーチ

五十嵐 久

  • 一般社団法人日本エグゼクティブコーチ協会 会長
  • 株式会社コーチビジネス研究所 代表取締役
  • 中小企業診断士
  • 国際コーチング連盟認定プロフェッショナルコーチ

エグゼクティブコーチとして、独自に開発した『価値観の調和マネジメント』の中小企業の皆様への導入支援と組織開発に取り組んでいます。学生時代に支えて頂いた中小企業の皆様への恩返し・恩送りを胸に、大学卒業以来中小企業支援一筋で取り組んでまいりました。これまで関わった企業数は延べ3,800社になります。”経営者一人一人にコーチを”という社会の実現を目指し、『価値観の調和マネジメント』を通して、『幸せ創造企業』の成長と発展に貢献したいと考えています。